非鉄金属の熱処理とは
非鉄金属の熱処理(加熱と冷却の組み合わせ)をすることにより形状は変えずに性質(硬さ、柔らかさ、伸び)を変化させる目的で行われます。
非鉄金属の一例としては、下記のような種類と熱処理があります。
非鉄金属の熱処理の例
種類 | 銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム、チタン合金、金、銀 など |
---|---|
熱処理 | 溶体化、固溶化、焼なまし、時効硬化 など |
生産品 | コネクター材料に代表される接点材料、車のホイール、メガネフレーム、アクセサリー、自動車部品、航空機部品などの様々な分野 |
各金属による処理例
- 銅合金と金
- 展延性が良く繰り返し熱処理をして薄く延ばしていきます。「酸化」を抑制するために窒素雰囲気中で熱処理をし、冷却を早くする場合には窒素+水素雰囲気中で冷却をします。
- チタン合金
- 窒素雰囲気では窒化、水素雰囲気では脆化がおきるため一般的にアルゴンガスを使用します。
- アルミニウム合金
- 表面が強固な酸化皮膜で覆われているため一般的に大気中での熱処理になります。
対応するサーマルの装置
Nシリーズ参考 各非鉄金属の熱処理一覧
銅合金 展伸材
- (補足1)焼なましは、冷間加工で硬化したものを再結晶温度以上で加熱し、再結晶と結晶粒の成長により軟化するために行う。
- (補足2)応力除去処理は、再結晶温度以下で加工し発生した残留応力を除去し、時間割れ(応力腐食割れ)を防止するため、黄銅板などに適用する。
また、高度に冷間加工して低温で応力除去すると、強くなりばね特性が向上するため、りん青銅板などに適用する。 - (補足3)時効処理は、高温から溶体化し低温で溶質原子を析出させ時効すると硬化するので、ベリリウム銅板などに適用する。
アルミニウム合金 展伸材
- (補足1)JISの質別記号
- F = 製造のまま
- O = 焼なまし
- H = 加工硬化したもの
- T4 = 溶体化後、自然時効
- T3 = 溶体化後冷間加工し、さらに自然時効
- T5 = 高温加工から冷却し、人工時効
- T6 = 溶体化後、人工時効
- T8 = 溶体化後冷間加工を行ない、人工時効
- T62 = T6の処理を使用者が行なったもの
- T42 = T4の処理を使用者が行ったもの
- T361 = 溶体化後、断面減少率6%の冷間加工を行ったもの
- T861 = T36を人工時効硬化処理を行ったもの
- (補足2)時効硬化時間は厚さが12mm以下のもので、12mmを増やすごとに30分を加える。
- (補足3)熱処理したものを焼なましする場合の焼なまし時間は、約410℃に加熱し、1時間以上保持すればよく、冷却は260℃まで毎時28℃以下の速さで行うことが望ましい。
マグネシウム合金鋳物
- (補足1)Mg鋳物はT4,T5,T6が行われるが、T2(高温加工後冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの)やFもある。
- (補足2)熱処理前はよく洗浄すること。アルミ粉は厳禁。
- (補足3)Mg-Al-Zn系はボイド防止のため260℃の炉に入れたあと徐々に溶体化温度に上げる。
- (補足4)アルミ合金より焼入れ感受性が低いので、溶体化よりの冷却は空冷または温水冷却でよいが、鍛造品は水冷する。
- (補足5)Mg合金は430℃で発火燃焼するので、溶体化の場合は炉内発火防止雰囲気とする。
チタン合金 展伸材
- (補足1)α合金は溶体化処理や時効処理しても効果が少なく、焼なましで使用する。
- (補足2)α+β合金は、強度はあるが冷間加工ができない。
- (補足3)β合金は溶体化処理すると冷間加工性も向上、時効すると強度が著しく向上する。
- (補足4)酸化防止のため、炉には真空パージとアルゴン雰囲気を併用する。
- (補足5)ACは空冷、WQは水冷の意味。
水素・窒素雰囲気を利用した非鉄金属用熱処理炉
「PMR」「RAV」